最近とある証券会社の担当者から聞いたのですが、その証券会社では、「特定口座」に預けられている株式を他の方に贈与した場合、システム上、他の方の「特定口座」に預けることはできず、「一般口座」でしか取り扱いが出来ないそうなのです。
株式の贈与が法律的に成立していたとしても、証券会社のシステム上の制約により、その後の管理が非常に煩雑になる可能性があるのでご注意ください。
特定口座とは、証券会社に預ける株式等の口座管理方法の一つで、「一般口座」か「特定口座」かが選択されています。「特定口座」を選択し、さらに「源泉徴収あり」という管理方法を選択した場合には、口座内で配当を受け取ったり、株式の売却を行った時に所得税等が源泉徴収され、口座内で課税が完結するため、改めて確定申告をする必要がないというメリットがあります。
口座内の全ての株式等の購入時の取得価格を口座内で記録していることにより、特定口座内で源泉徴収を行い、課税関係を完結させることが可能になるのです。
こののメリットが非常に大きいため、多くの投資家の方はこの「特定口座」かつ「源泉徴収あり」という管理方法を選択しているのが実情です。
今回、贈与された株式を「特定口座」で受け入れることができないことをご説明する前に、贈与された株式の売却時の税金上の取り扱いを説明しなければなりません。
通常の株式の売却時は、売却による収入額から、その株式の購入時の取得価格(取得費)等を控除して、利益(売却益)が出ている場合には、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。一方、贈与された株式を売却する場合には、贈与者(前所有者)の購入時の取得費を引き継いで、売却収入から引き継いだ取得費をマイナスして売却益を計算する必要があります。
ここで問題となるのが、贈与者から受贈者への取得費の引き継ぎです。
特定口座では、購入したすべての株式について、購入時の取得費が記録されていますが、贈与で受け入れた株式については、システム上、贈与者(前所有者)の取得費を引き継ぐことが出来ないのだそうです。従いまして、贈与された株式を特定口座で受け入れることが出来ないのです。
一般口座で株式を管理するということは、各銘柄の取得価格を覚えておいて、売却時には銘柄ごとに取得費を算定して譲渡所得の確定申告をしなければならないことになります。これは場合によっては相当面倒な手続きになりますので、株式の贈与自体が、現実的な選択肢にならないケースもありそうです。
全ての証券会社がそういった制限があるとは限らないので、証券会社に預けている株の贈与を検討されている方は、事前に担当者の方に、システム上の取り扱いを確認してみることをおススメします。